研究概要 |
本研究は,網膜血管径の光学的な実時間計測法を開発し,レーザー血流計と合わせた眼底血流"その場"解析システムを確立することを目的とする.平成10〜11年度に得られた研究成果の概要を以下に示す. 1.眼科観察装置,白色光源,光ファイバー,及びマルチチャンネル型分光器により,コンピュータ制御のもと,網膜特定部位の分光反射率を計測・データ保存する網膜分光反射率測定装置を製作した. 2.ヒト網膜における血管及び周辺組織分光反射率を測定・統計解析し,最適なコントラストを得るための照明光源波長として570nmを選定した,動脈と静脈の自動判別には,分光測色法から求めた色度座標における主波長べクトルを用いる新規な手法を考案し,その可能性を示した. 3.リニアイメージセンサで網膜血管を横切るように線状の反射光強度信号を検出するため,コンピュータ制御による血管径検出ユニットを試作した. 1ラインの走査時間は125ミリ秒,有効利用素子数は25〜50ピクセル程度が最適であるとの駆動・検出条件を明らかにした. 4.リニアセンサから得られる線状走査信号に移動平均と微分を施す信号処理ソフトを開発し,当初予定の許容精度と処理速度で血管径を良好に決定できることを確認した. 5.反射率チャート紙とガラス毛細管による擬似血管モデルを用いた校正で,誤差5%以下を確認した.また,デジタルビデオ動画記録と本測定でヒト網膜血管径を実時間比較し,本方法の有効性を確認した. 6.試作した血管径計測ユニットを開発済みレーザー網膜血流計に組込み,血流速度と血管径,血流量比をほぼ実時間で測定・表示できるシステムを完成させた.さらに動・静脈の判別,眼球運動による位置ずれの検知,ならびに自動再測定等の機能を付加し,眼底血流"その場"解析システムを確立した. 今回の研究過程で分光測色法に基づく動脈と静脈の自動判別法を新規に考案したが,これはさらに酸素飽和濃度計測への応用が期待でき,今後これらの発展可能性を追求していく計画である.
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