平成10年度は、光の後方強調散乱現象の理論的解析と実時間モニタリングを開発するための実験装置開発を行った。 (理論解析)散乱現象の解析は、計測法の理論的基礎として重要である。申請者が開発した確率汎関数の方法を用いて、不規則表面・薄膜からの光散乱特性を解析した。ガウス分布を持つ周期的不規則表面からの散乱においては、従来から知られている後方強調散乱だけではなく回折後方強調散乱が発生することがあることを発見し、学術論文として発表した。不規則表面を持つ薄膜による散乱に関しては、膜厚が薄い場合には詳しく研究されているので、比較的膜厚が大きい場合の解析を行った。膜厚が大きい場合には、薄膜内での多重反射による共振効果により、散乱の角度分布にリップルが多く現れることが分かった。さらに、著者らが先に導いた2値確率過程の直交汎関数を用いた新しい方法ににより、2値の周期的不規則表面からの散乱を解析した。これらの研究成果は、電気学会電磁界理論研究会に報告した。 (実験装置の開発)光の後方散乱の角度分布を計測するため、偏光プリズム、可変減衰器、ビデオカメラとTVモニター等を用いた実験装置を設計し、種々の光学部品を購入して組み立てた。小型化・軽量化を目的として、光源として半導体レーザーを用いおり、また、入射ビームと後方散乱光を分離するため、偏光プリズムを用いた。現在、実験装置を調整し、基本散乱データを収集している段階であり、今後、各種の不規則表面を持つ物体や薄膜に対して後方散乱特性を計測する計画である。
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