研究概要 |
工業用途では,金属のような著しい鏡面反射特性を有する物体の3次元形状と光沢度の同時測定を要求されることがある.しかし,一般的には鏡面物体の測定は困難な場合が多い.そこで本研究では拡散物体から鏡面物体まで同一原理で測定できる3次元形状と光沢度のオンライン同時測走法を提案することを目的とする.その基本原理は、マルチスリット光投光法の原理に基づくもので,複数のレンズとセンサを用いて測定領域を分割し、その領域に一本のスリット光を投光して、鏡面物体の形状と光沢度の同時測定を可能にするものである. 本年度は実験による提案方法の検証と従来法との比較検討を行った.測定対象は平板と円柱の鏡面物体,凹面と凸面からなる鏡面物体,及び平板と円柱の拡散物体であった.その結果,従来のスリット光投光方式では測定が困難とされていた鏡面物体の形状測定に成功した.その測定精度は,比較のために行った拡散物体とほぼ同程度であり,本方法の有効性が確認できた.また,測定対象からの反射光の光強度を測定することにより,測定対象の光沢度も測定も可能となった.実験では,完全鏡面である鏡,半鏡面物体であるアルミニウム,完全拡散物体である木などの光沢度を測定し,それらの光沢度が本研究の方法で把握できることを確認した.最後に,電池の頭部など複雑な形状をもつ鏡面物体の測定を行い,何ら問題ないことを確認した.本研究の方法は従来の画像を用いる受動的な方法に比べて,測定環境に多少制約があるものの,測定精度や信頼性の面で優れた特性を示し,工業的な鏡面物体の形状測定や光沢度測定に有望であることが明らかとなった.今後は,スリット光の戦略的な投光法を検討して,測定時間の短縮に取り組む予定である.
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