本研究は、エンジン、ボイラー、石油ガス化ファンヒータ等の燃焼機器等や煙草から排出され、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や煙、健康被害の原因となる花粉、ダニ、黴の胞子、細菌等の広範囲の環境汚染物質の濃度や浮遊量を計測する小型・集積化・高機能センサを、金属酸化物からなる多層半導体薄膜を検知材料とし、IC技術とマイクロマシーニング技術を用いて、実現できることを明らかにしようとするものである。 本年度は下記のように、環境計測用センサの集積化プロセスの開発と感度測定を行った。センサ基板として、集積化に適するSi基板を利用した。ポータブル機器として用いるのに必要な低電力消費化のため、マイクロマシーニング技術を用いてSi基板を加工し、SiO_2/Si_3N_4/SiO_2膜を用いたダイヤフラム構造とした。その上に、センサ膜を加熱するためのCr/Pt+W/Cr膜を用いたヒータを作成し、さらに絶縁膜として、SiO_2膜を付けた。その上に、センサ膜第一層としてクラックや剥離が生じにくく安定性と耐久性に優れたFe_2O_3系薄膜をスパッタリング法により付けた。続いて、センサ膜第二層として、高感度なSnO_2系薄膜またはWO_3薄膜を付けた。本研究では、ホトリソグラフィー技術を用い、13mm×13mmの一枚のSi基板上に、8個のセンサ素子を集積化した。 センサの完成後、NOxの他に、煙草の煙およびディーゼル排気ガスを導入し、これらに対するセンサのコンダクタンスの時間的な変化を動作温度の関数として観測した。その結果、本センサは、NOxだけでなく、煙草の煙およびディーゼル排気ガスに対しても高い感度を示し、これらのセンサとして使用できることが明らかとなった。今後は主として粒子状物質に検出対象を広げ、環境計測用センサとしての可能性を追求していく。
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