波長10.6μmの赤外光を用いたエリプソメータの開発に向けて、H10年度試作した焦電素子(P3785-03:浜松フォトニクス)を用いた赤外光の光量測定システムの特性実験を実施した。H10年度では、低光量領域で光量と出力に線形性が見られたことを報告したが、この測光システムをエリプソメータに応用するためには、さらに安定性と光量測定範囲を大きくする必要がある。そのために、チョッパの周波数を0.1Hzから50Hzまで変化させ焦電素子のダイナミックレンジの改善効果と安定性について実験を行った。その結果、チョッピング周波数が0.1Hzから10Hzまでは、周波数の上昇につれて焦電素子の入射飽和光量が大きくなり特性の向上が見られたが、さらに周波数を高くしてもばらつきが大きくなるだけで特性の改善は見られなかった。しかも、10Hzの条件でも測定値のばらつきが大きく安定性に欠けるため遠赤外エリプソメータの光量センサとしては適用が難しいことが明らかになった。焦電素子の出力変動が大きい理由として、光源のCO_2レーザ自身の出力変動が考えられるため、高速の薄膜サーモパイルセンサを用いて出力変動を調査した。その結果、レーザ光量が低周波から10kHzオーダの変動成分があることが判明した。提案している偏光解析の測定原理は、光源の変動には影響を受けない特性を持っているが、光量検出センサである焦電素子は、パワーの微分値に比例するためノイズを含む光源には本質的に弱い。したがって、次年度は光量センサとして薄膜サーモパイルを用いたシステムの可能性について研究を進める予定である。以上の内容は、H11年度鶴岡高専卒業論文「CO_2レーザを用いた偏光解析システム」に報告されている。
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