高速で線形性に優れ、かつ廉価な赤外線検出センサの特定が高速赤外エリプソメータの開発に向けて最も重要である。そのセンサとして、最初に焦電素子の特性を実験的に評価しその可能性を調査した。その結果、赤外線光量が10mW以下の低パワー領域では線形性が確認されたが、それ以上のパワーではヒステリシス特性が現れて線形特性が低下し、出力の再現性が著しく低下することが明らかになった。 次に、薄膜サーモパイルセンサに着目しその特性の調査を行なった。このセンサは、焦電素子に比較すると高価であるが、冷却を必要とするMCT(HgCdTe)よりは廉価であり、冷却の必要もなく使いやすい長所をもっている。実験結果から、このセンサは10mWから1Wまでの広い範囲で線形特性を有し、同時にμsecオーダの高速応答性を持つことが実験的に確認された。この薄膜サーモパイルセンサを3個利用した3チャネル型赤外高速エリプソメータを試作し基礎実験を行った。その結果、以下の点が明らかになった。 1)光源のCO_2レーザの発振ノイズおよび偏光特性の不安定性が定量的に実証された。 2)可視光では適用が困難な拡散面に対して適用可能であることを実験的に確認した。 3)金属表面のエリプソパラメータは、金属の種類に関係無く、位相差はπ、振幅比角は45°近傍の値を示すことが確認された。測定誤差や感度向上を図るために、この情報を利用する必要がある。 4)3チャネル型赤外高速エリプソメータの評価は完了していないため、本研究を継続する予定である。
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