研究概要 |
計測・制御の分野の発展に伴って,センサからの信号をディジタル信号に変換し,マイクロコンピュータ等に取り込み,処理する技術が必要不可欠となってきている。容量型センサは物理量の変化に応じてその静電容量値が変化するセンサである。また,スイッチトキャパシタ回路はキャパシタに蓄えられた電荷(アナログ量)の転送をIC化スイッチの開閉でディジタル制御する回路であり,元来アナログ・ディジタル混成回路である。従って,スイッチトキャパシタ回路はセンサの信号処理を行うためのA/D変換器を構築するのに最適な回路である。 今年度はまず循環型のA/D変換器を設計、試作した。循環型A/D変換器は1ビットの変換回路を変換アルゴリズムに従って,繰り返し用いることで所望の分解能を得る方式であり,中程度の変換速度と精度が得られる。その試作した回路は,センサからの信号電荷を蓄積,あるいは基準電荷を放電するためのスイッチトキャパシタ積分器,積分器出力の極性を判定しディジタル出力を決定するための比較器,及びこれらの回路動作を制御するためのディジタル制御回路の三つの部分より成っている。積分器,比較器はその構成要素であるオペアンプのオフセット電圧,有限開放利得に不感な構成とし,またキャパシタ,スイッチに付随する寄生容量に不感な回路構成とした。従って,高い変換精度が得られることになる。 スイッチトキャパシタ回路はMOSIC製造工程で実現可能であり,シリコン基板上に容量型センサを形成する技術と共通の工程を多く持ち,センサと信号処理回路を一体としてIC化したインテリジェントセンサが実現できる。また,高精度で低コストの信号処理が可能となり,開発した回路は計測制御の分野で広く活用されると考えられる。
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