研究概要 |
大規模で複雑なシステムの制御系設計のための階層的なモデリング法について,本年度は具体的な二つの対象(半導体露光装置と自動車)を用いて検討を行った。 まず,半導体露光装置のアクティブ除振制御系設計のためのモデリング問題では,多自由度(6人出力)システム同定実験を行い,部分空間法を用いて対象のモデリングを行った。その結果,1入出力系のシステム同定を複数回行っていた従来法と比べ,1回のシステム同定実験で6入出力間すべての動特性を高精度に同定する方法を確立することができた。さらに,システム同定結果より物理パラメータを計算する方法についても検討し,その結果を用いて半導体露光装置のシミュレータを作成しているが,これは現在も作業中である。 つぎに,自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行った。 まず,アクチュエータであるスピーカ,センサであるマイクロフォン,そして音が伝搬する音場の各要素を物理モデリングし,音響伝達系の物理モデルを導出した。つぎに,実際に音響伝達系のシステム同定実験を行い,その結果を物理モデルに反映させる,いわゆるグレーボックスモデリングを行った。特に,この結果は,フィードバックアクティブ騒音制御系を設計する際に重要になってくる。今後は,得られた基にして,自動車車室内の音響伝達系のシミュレータを作成していく予定である。 以上で説明したように,本年度は大規模複雑系の階層的モデリングについて,二つの実例を用いて,実際に同定実験を行うことにより研究を行った。
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