本研究の目的は、システムモデルの同定を、丸め誤差、打ち切り誤差などの計算誤差も考慮した同定精度まで含め、客観的かつ定量的に行なうための手法を、確定システムのみならず観測雑音など確率的要素を含む確率システムについて考察する。このとき、バッチ型同定法に加えて、これに対峙する逐次同定法についても検討するほか、同定法の開発も視野において研究を展開している。 1. 確率近似型逐次推定法における収束性解析 確率近似型逐次推定法によって時間とともに変動する非線形回帰方程式の根を推定する問題に対し、収束性の解析を行ない、従来よりゆるい条件下での収束を証明した。この結果は非線形システムの状態推定へ応用の可能性が期待できる。 2. 計算誤差の同定誤差に与える影響に関する考察 同定アルゴリズムの実行において、丸め誤差、打ち切り誤差などの計算誤差が同定誤差がどのように影響するかについて把握するために、計算誤差の大きさを定量的に評価する手法の一つである区間解析法を、システム同定に適用することの可能性の検討を開始したが、十分な成果はまだ得られていない。
|