研究概要 |
非線形システムの同定問題は,線形の場合に比べて対象が複雑なだけに従来から難しい問題とされてきたが、著者等は従来,擬似不規則信号の一つであるM系列の性質を用いると,M系列の高次モーメントが一定の条件のもとで容易に得られることに着目し,M系列を入力として加え,非線形システムの出力との相互相関を求めるだけで,Volterra核を求める方法を見出した。 シミュレーション段階では充分実用できることが分かったので,次の段階として本方法を実際の非線形システムの同定への応用について研究することとし,ファナック(株)および三菱化学(株)との共同研究を開始し,非線形なメカニカルシステムおよび非線形な化学プロセスの実際の同定上の問題点を解明を行った。 (1) 実際のプロセスへの応用 応答の遅い化学プロセスに対しては周期の短いM系列が必要となるが,周期が短くなると断面の重なりが生ずる点を解決するため、通常のM系列の他、符号を反転させたM系列および反対称M系列を用い偶数次と奇数次のボルテラ核を分離同定する手法を開発した。シミュレーション実験によりこの方法が有用であることを確認した。次に実際の化学プロセスとして、ポリエチレンの重合反応器の非線形は特性の同定をシミュレーションにより行い、3次までのボルテラ核の測定を行うことができ、本方法が有用であることを確かめた。 (2) 実際のメカトロサーボ系への応用として,サーボシステムの非線形特性の同定を行った。モータがフィードバック制御系に組み込まれているとどのような非線形特性を示すかを知るため、その特性をボルテラ核で表現して同定を行った。3次までのボルテラ核は測定できたが、まだ解決すべき問題点が残っており、研究中である。
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