研究概要 |
走行クレーンや旋回クレーンを用いて吊り荷を目的の場所に運ぶ際には,急加速や急減速による慣性力の変化或いは突風などの外乱により,しばしば荷が揺れてしまうという現象が発生する。また吊り荷を目的の場所に降ろす際にも完全に揺れが止まらないと降ろすことができない。このような現象に対しては,従来オペレータの経験や勘で対応することが多く安全性,経済性の面からその自動化が強く望まれている。本研究では,吊り荷の位置や速度を同時に制御することができる多変数制御理論を用いて,吊り荷の揺れを抑制できる制御システムの開発を行った。 走行クレーンに関しては,(1)平成10年度は状態フィードバック制御理論に基づいた手法,(2)平成11,12年度にはH_∞制御理論に基づいた手法により制御システムを開発し,両手法ともに顕著な振れ止め効果を実験により確認できた。平成13年度はこれらの結果を踏まえて,実験装置とコントローラの間に存在する伝送遅れを考慮したモデルに基づいた制御システムの開発を行い,シミュレーションで顕著な成果を確認した。 旋回クレーンに関しては,(1)平成11年度に非線形コントローラを用いた制御システムの開発及びシミュレーションによる振れ止め効果の確認,(2)平成12年度には実験装置により顕著な振れ止め効果を確認することができた。旋回クレーンの振れ止め制御に関するこの成果は,日刊工業新聞及びJETRO発行の「New Technology Japan」に掲載され,学会のみでなく産業界でも広く注目を集めている。また,我々の研究に刺激されて最近同様な研究発表が多く見られるようになった。 平成13年度はこの結果を踏まえて,関数論に基づいた制御系設計理論を新たに構築した。その結果,昨年度以上に高性能な制御を行うことができるようになった。この理論は今までにない全く新しい考えに基づいており,純粋理論の研究者にも注目されている。今回の旋回クレーンの研究においては,最も重要な動作である旋回動作に限定して研究を進め顕著な振れ止め効果を確認することができたが,今後はブームの起伏動作も考慮した制御系設計を行っていく予定である。 両研究ともに学会論文誌への投稿を準備中である。
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