本研究を遂行し、下記の成果を得た。 1.ACモータに関し、固定子鉄損を考慮した統一数学モデルを構築することに成功した。新規数学モデルは、鉄損の主要素である渦電流損とヒステリシス損を個別にあるいは同時にモデル化することに成功している。 2.誘導モータ、同期モータ(円筒形永久磁石同期モータ、突極形永久磁石同期モータ、同期リラクタンスモータなど)に固有の固定子鎖交磁束モデルを構築する共に、統一数学モデルに対しこれらのモデルを与えることにより、各モータのための具体的数学モデルが直ちに構築されることも明らかにした。 3.平衡循環行列を導入することにより、U、V、W相の3相レベルにおいても同様なモデル構築が可能であることを新規に示した。 4.モータ挙動の目視的あるいは包括的理解には、ブロック線図化したモデルが威力を発揮することが少なくない。本研究では、ベクトル信号を用いた簡潔なブロック線図の構築に成功した。新規なベクトルブロック線図は、一般座標系上で構築されているのみならず、渦電流損、ヒステリシス損を含む鉄損の表現にも成功しており、高い一般性を具備している。 5.誘導モータ、同期モータの固定子鉄損に関し、この等価鉄損抵抗の同定法を確立した。構築した同定法によれば、渦電流損、ヒステリシス損に対応した等価鉄損抵抗を同時に同定することが可能である。これを幾つかの供試機を用い実験的にも検証した。 6.誘導モータに関しては固定子鉄損を考慮したベクトル制御系の構成法を既に構築していたが、本研究を通じ、同期モータに関しても同様なベクトル制御系の構成法が可能であることを確認した。 7.誘導モータに関し、銅損に加え鉄損を含む損失を最小とする最小損失のベクトル制御法を確立した。 8.以上の成果を、センサレスベクトル制御に、更にはこれを用いた電気自動車に活用し、その有用性を確認した。
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