研究内容は大きく分けて、1)安定論の立場から進めてきた非線形ロバスト適応制御に関する研究を、2次形式の最適制御あるいはH∞最適制御の観点から再構築する。非線形ロバスト最適適応制御理論または非線形ロバストH∞(最適)適応制御理論をあらたに展開することで、様々な不確定要素に対するロバストパフォーマンスを陽に指定できるような制御系設計法を確立する部分と、2)制御動作を計画、制御装置の選択と適切な配置、シーケンス制御の部分も含めたハイブリッド系(フィードバック制御とシーケンス制御)の運転まで拡大解釈して、拡張された概念による新しい知能適応制御系の構成理論を構築する部分の2つからなる。 今年度は項目1)の内容に関して、これまで進めてきた研究を継続する中で以下のような成果を得た。 1.最適制御またはH∞制御の観点から適応制御系を再設計する手法について研究を進め、未知のシステムパラメータを外乱と見なして非線形適応H∞制御系を構成する手法を開発した。一般の相対次数の場合の制御器の一般化形式について、関連する成果が2編の論文として発表された。 2.未知のシステムパラメータを外乱と見なして非線形適応H∞制御系を構成する手法を、非線形パラメトリックモデルの制御に拡張する研究を行った。非線形パラメトリックモデルの例として隠れ層を有する3層のニューラルネットを考え、ニューラルネットの近似誤差、各層の重み係数を学習する際の算法上の誤差、および学習係数そのものの誤差と時間変動成分を等価的な外乱と見なして、非線形適応H∞制御系を構成する手法を開発した。関連する結果が1編の論文として発表された。 3.未知のシステムパラメータを外乱と見なして非線形適応H∞制御系を構成する手法を、ロボットマニピュレータの軌道追従制御に適用する研究を行った。マニピュレータのパラメータの時間変動成分や不確定性に依存しない非線形適応H∞制御系を構成する手法を開発し、小さな制御トルクで良好な追従性能が実現されることを調べた。関連する結果が1編の論文として発表予定である。 これとは別に項目2)に関して、以下の研究を行った。 4.シーケンス制御と関係のあるゲインスケジューリング制御の、スケジューリングパラメータの適応的な調整法についても研究を行った。LPVシステム(Linear Parameter Varyingシステム)に対して、LMI(Linear Matrix Inequality)に基づく適応型のゲインスケジューリングH∞制御系を構成する手法を開発した。関連する成果が1編の論文として発表予定である。
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