研究概要 |
コンクリートは極めて耐久的であるため,海洋などの過酷環境下にコンクリート製の構造物が建造される機会が増えている。しかし,いかに耐久的なコンクリート構造物といえども長期間の使用に対しては劣化していくのが普通で,維持管理や補修・補強を含め海洋コンクリート構造物を合理的に設計していくためには解決しなければならない課題も多い。すなわち,海洋コンクリート構造物は,湿潤環境下に置かれ,さらに海水中の塩分と波の繰返し荷重による腐食と疲労(腐食疲労)の影響に曝され,通常の陸上構造物における塩害あるいは疲労のみといった単一作用によるよりも遥かに速い速度で劣化すると考えられる。さらに,材料の海水中の疲労性状としては,コンクリートは,(1)湿潤環境下では気中の乾燥状態におけるよりも疲労強度が大幅に低下する。鉄筋においては,(2)海水中では腐食疲労の影響を強く受け,疲労強度は気中の1/3程度まで低下し,さらに疲労限の消失が生じる,等の事実も考慮されなければならない。 本研究は,湿潤(水中や海水中)でコンクリート構造の疲労試験を実施することによって,上述の材料レベルの疲労性状とこれらを複合したコンクリート構造物レベルの疲労性状の関連性や類似点,相違点を明確にし,より合理的な海洋コンクリート構造物の耐疲労設計を提案するために計画した。 海洋コンクリート構造物の疲労破壊様式に関しては,気中では主鉄筋の疲労破断によって曲げ破壊する部材であっても水中ではせん断疲労破壊になりやすいことが明らかになった。そこで,スターラップの有無,スターラップ筋の種類と量,せん断スパン/有効高さ比,CFシートによるせん断補強,等を要因に選んだ鉄筋コンクリートはりを作製し,一部の疲労試験は終了した。また,損傷コンクリート構造物として,アルカリ骨材反応による損傷を採り上げ,既に打設した供試体にはへアークラックが発生している。このように,多時間を要する損傷供試体の作製を含め,本年および次年度の研究は順調に進行している。
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