研究概要 |
1.圧接継手部の低サイクル疲労とAE特性 低サイクル疲労破壊が問題となる構造部材として,鋼材の圧接継手に着目して低サイクル疲労試験を行った.圧接継手に着目したのは,阪神大震災において破断事例が多数生じたこと,欠陥が存在する場合と健全な場合とでその低サイクル疲労強度,破壊モードが極端に異なることが予想され,AEの発生挙動にも明確な差が生じると考えられたことによる.試験体の製作にあたっては,鋼材端面に塗料を塗付した状態で圧接を行い,意図的に圧接面に欠陥を発生させた.欠陥のある圧接面を含む位置で,試験体をさらに小片に切断し,低サイクル疲労試験を行った.低サイクル疲労試験を行った結果,健全なものについては結晶状の破面となり,欠陥が存在するものについては平坦な,いわゆるフラット破面の形態となることが明らかとなった.また,低サイクル疲労強度についても,欠陥がある場合には健全な場合の約半分の寿命となった.しかし欠陥のある場合とない場合とでAE特性には有為な差はみられなかった.逆にいえば欠陥が有る場合と健全な場合とで,破壊モードには相違がないことを示しているものと考えられる. 2.小型試験体によるAE特性の実験的解明 SS400鋼材から切り出した砂時計型試験体に対して,ひずみ制御の低サイクル疲労試験を行った.試験体には2つのAEセンサを取り付け,1次元の位置標定を行うとともに,個別のAE波形を記録した.試験体に与えるひずみ振幅は,たかだか10回程度の寿命となる極低サイクル疲労の領域と,それ以上の通常の低サイクル疲労の領域とになるよう,区別して決定した.それぞれのひずみ振幅を試験体に負荷したときのAE波形はデータレコーダに記録している.実験結果をもとに,極低サイクル疲労の領域と通常の低サイクル疲労の領域とにおけるAE波形の特性を明らかにした.
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