研究概要 |
成層波動場のGreen関数のスペクトル表現の展開プロセスについて,前年度の結果を数学的に再吟味すると共に,Green関数のスペクトル表現を境界積分方程式法へ適用し,散乱波動場の解析を行った. 成層弾性波動場におけるGreen関数スペクトル分解表現については,発見的な方法を用いて前年度までにすでに得られていた.しかしながら,スペクトル上の固有関数についての直交関係式が見出せないことから,数学的な展開については,さまざまな問題が残されていた.ここでは,佐藤の超関数(Hyperfunction)の概念を用いることで,固有関教の直交関係式を用いることなく,Green関数の誘導プロセスを示すことに成功した(応用力学論文集 VoI.2,土木学会論文集No.640). スカラー成層波動場についても,Green関数のスペクトル分解を論じるためには,波動方程式の作用素の自己共役性を示すプロセスが要求されることになる.こうした問題を完全に厳密に論じることは不可能なまでも,今年度は,katoやWilcoxの著作を参考に,作用素の対称性と自己共役性を区別し,Green関数の誘導プロセスを示した.また,この成層波動場のGreen関数を散乱問題のための境界積分方程式法に適用する場合,境界積分とスペクトル積分の順序の交換(Fubiniの定理に基づく)によって,散乱波がスペクトルに分解され,そのスペクトル特性から散乱波の挙動がうまく説明できることを見出した(Computational Mechanics Vol.25).
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