研究概要 |
本研究では,構造物の性能保有確率の算定理論構築と算定手法の開発を目的としており,初めに,信頼性設計法における「性能設定のための社会・経済的要因を考慮した方法論」および「性能レベルと性能評価式の関連の連結方法」について検討をした.この内容は継続した検討課題である. そのほかの研究内容について以下にまとめる. 1. 性能保有確率の算定手法 対象システムをホワイトノイズ入力による状態ベクトル非線形方程式および非線形観測方程式に定式化し,非線形システムの推定理論の開発を行った.その際,厳密な非線形フィルタの理論式を誘導し,同時に求められた非線形フィルタの理論式が現実的に実現不可能なことを確認した.次に,前述の理論式をもとに,非線形システムの近似フィルターについての検討を行い,未知最適状態ベクトルの近傍において近似展開を行う実現可能な近似フィルターの開発を行った.その際,システムが線形の場合カルマンフィルタに一致すること,1次の項まで線形化した場合には,拡張カルマンフィルタと等価になることを確認した. また,上記理論的アプローチと並行して数値解析的手法の開発を行った.本研究では,システムの非線形挙動に追従できる適合型重要サンプリング手法による効率的な性能保有確率の算定手法に開発を行っている. 2. 鉄筋コンクリート橋脚の性能設計 現実的な問題設定を行い,RC橋脚の損傷期待値算定に関する研究を行った.建設地点の地震危険度を表現する地震ハザード曲線,地震荷重に対する対象構造物の損傷度を表現するDamage Index Curveを用いて,合理的な損傷期待値算定システムの構築に関する研究を進めた.
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