研究概要 |
現在用いられている地盤の液状化発生予測手法は,液状化が発生するかしないかの2極的な結論を出す予測手法である.しかし,阪神大震災の事例からも明らかなように,地盤あるいは土構造物の液状化による実際の被害事例を見ると,その被害程度は無被害のものから重大なものまで連続的に変化しており,現在の予測手法で考えているような2極的な被害にはなっていない.これは,外力である地震動の荷重レベルおよび地盤のねばり強さが連続的に変化しているからに他ならない.特に,土の地震荷重に対するねばり強さ(靭性)に関しては,それを定量的に評価する手法がないのが現状である.このため,液状化によって急激にせん断強度を喪失するねばりのない緩い砂質土の破壊現象と,大きなひずみが発生してからも粘着力によってねばってくれる粘性土や大ひずみで剛性が回復する密な砂質土の破壊現象が明確に区別することができていない状況にある. 平成10年度には,このような観点から,まず土の地震荷重に対するねばりを定量的に評価できる試験法を新たに提案した.また,提案手法に基づいて,レキを除く砂分・細粒分から構成される様々な土を対象として,その適用性を検討した.提案手法の要点は,ひずみ振幅一定の繰返し三軸試験を,大ひずみレベルで剛性が回復する密な砂の特性も検討できるように,ひずみレベルを徐々に増していく方式で行うこと.実験結果を塑性ひずみエネルギー吸収性能で整理し,ひずみレベルに応じたそれぞれの土のエネルギー吸収性能を評価できる点にある.この方法によって,液状化によってせん断剛性が急激に低下するゆるい砂質土と繰返しせん断に対してねばりのある粘土を明確に分離することが可能となった.
|