研究概要 |
従来の研究から低温下におかれた岩質材料では,熱応力によって円形低温熱源の周辺に,過渡的に大きな半径方向ヒズミが発生し,自由表面付近に剥離性の破壊が認められることを実験的に明らかにした.平成10年度の研究においては,この現象をさらに詳しく検討するために,水と氷の力学特性の非線形性,凍結潜熱と熱膨張率の温度依存性を組み込んだ応力・熱・浸透達成数値解析を実施し,その傾向をある程度明らかにすることが出来た.また,岩石実質部分の構成関係を弾塑性構成則にするとともに,入力パラメータとしての強度特性を低温下における三軸圧縮試験から決定した. 具体的には, 1) 常温下における白浜砂岩・湿潤供試体の一軸圧縮強度は約28MPaであるが,-20℃の凍結下では約78MPaへと一軸圧縮強度が著しく増加することが判明した. 2) 1)に伴い,接線ヤング率も4330から7820MPaへと増加することが明らかになった. 3) 以上の結果を,強度定数に変換しMohr-Coulombの破壊基準で表現することとし,摩擦角成分を一定としたとき粘着力が大幅に増加する影響と,接線ヤング率の応力レベル依存性を,連成解析に取り込んだ. 4) 低温熱源に接する円孔部分から供試体への熱伝達は,熱伝達係数に支配される現象であるが,この熱伝達係数を拡張カルマンフィルタ法により逆解析した結果,温度依存性であることが判明し,この効果も速成解析に取り入れた. 5) 3)と4)の影響を全て取り入れた結果,繰り返し凍結融解時の残留ひずみの実験値と解析結果は近づいた.ただし,凍結初期の変形挙動を解析結果が定量的に表現できない点を,次年度の課題としたい.
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