地震によって液状化した地盤の変形量予測

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10650478
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 吉嶺 充俊 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 講師 (80251338)
• キーワード: 地盤の液状化 / 地盤の流動変形 / 室内土質力学試験 / 異方性 / ダイレタンシー / 初期せん断荷重 / 三軸せん断試験 / 中空ねじりせん断試験

研究概要

(1)中空ねじりせん断装置の改良: 既存の中空ねじりせん断装置に対して圧力配管・計測センサー・制御装置類の整備を行うとともに、ねじり載荷装置を制作した。これは、ひずみ制御・応力制御の両方の載荷方法を同時に実現するとともに、繰返し載荷時にシリンダーのストロークでは対応できない大変位に対してモーター駆動で追随できるという他に類を見ない特徴を有している。また、高さ20cmの供試体をもせん断できるように、供試体支持機構についても全面的な改良を加えた。
(2)計測システムの作成: 昨年度の三軸試験用のシステム構築に引き続き、中空ねじりせん断試験において、実験中に供試体に作用する加重・圧力・変形等をリアルタイムに表示して所定の応力状態を確実に制御するとともに、動的載荷時に高速でデータを取得するプログラムを開発した。
(3)三軸せん断試験の実施: 多数の非排水繰返しせん断試験を行い、特に初期せん断加重が存在する場合の砂の液状化挙動を詳細に調べた。たとえば、繰返し回数20回で不安定変形を生じる繰返し応力比を液状化強度とした場合、相対密度約40%の豊浦標準砂供試体で、初期せん断がない場合には強度比0.13だったのに対して、初期圧縮せん断応力比0.2での強度比は0.19、初期伸張せん断応力比0.2の場合は0.09であり、強度の異方性を有することがわかった。すなわち従来の三軸液状化試験は両極端の応力条件を交番するものであり、特に初期せん断が存在する場合には現実を反映していないことを明らかにした。
(4)中空ねじりせん断試験の実施: 上記試験結果を受けて、より一般的な応力条件である単純せん断試験を行った。その結果、単純せん断条件での強度・変形特性は三軸圧縮・伸張の中間的なものであり、一般的な三軸試験からその挙動を推定する方法を示した。また、過去の海底斜面の液状化事例を詳細に調査し、単純せん断試験結果から現実の地盤の液状化挙動を明快に説明できることを示した。

研究成果

• [文献書誌] 吉嶺充俊,P.K.Robertson,C.E.Wride: "Undrained shear strength of clean sands to trigger flow liquefaction"カナダ地盤工学会論文報告集(Canadian Geotechnical Journal). Vol.36,No.5. 891-906 (1999)
• [文献書誌] 吉嶺充俊: "Quasi-steady state:a real behavior?:Disussion"カナダ地盤工学会論文報告集(Canadian Geotechnical Journal). Vol.36,No.1. 186-187 (1999)
• [文献書誌] 吉嶺充俊,R.Ozay, A.Sezen, A.Ansal: "Undrained plane strain shear tests on saturated sand using a hollow cylinder torsional shear apparatus"地盤工学会論文報告集(Soils and Foundations). Vol.39,No.2. 131-136 (1999)
• [文献書誌] 吉嶺充俊: "さまざまな応力・ひずみ条件における砂の非排水せん断挙動"第44回地盤工学シンポジウム論文集(地盤工学会). Vol.44. 145-152 (1999)
• [文献書誌] 吉嶺充俊: "Undrained shear behavior of undisturbed sands at large deformation,"Memoirs of Graduate School of Engineering, Tokyo Metropolitan University. Vol.49. (1999)
• [文献書誌] 吉嶺充俊,P.K.Robertson, C.E.Wride: "流動する砂の非排水せん断強度"第33回地盤工学研究発表会概要集. Vol.33,No.1. 1041-1042 (1998)