研究の目的は、降雨時の斜面表層崩壊の機構を明確化するとともに、植生の果たす斜面安定化機能の力学的評価を行うことである。本年度は、現地表層土の浸透特性の把握と、根系により補強された土のせん断強度特性の把握に重点を置いた。まず、自然斜面で使用可能な現地直接せん断試験機を試作し、現地での土(根系を含むものを含む)のせん断試験を行い、現地の低拘束圧下での根系を含む土の強度特性を収集し室内せん断試験結果と比較し、礫を含まない場合には両者がかなりよく一致することを確認した。また、原位置透水試験方法を数通り考案し、透水試験機を試作して、植生・腐植土を含む現斜面での鉛直浸透特性と斜面平行方向の浸透特性を求め室内透水試験結果と比較した。しかし、現場試験のスケールと室内試験のスケールの差、試験に必要な時間などの点で、満足のできる方法は無く、今後の課題となった。なお、これらの試験機は、土砂流出について研究中の国立公園大山と鳥取大学演習林のある蒜山で試用した。 植生の存在により生じるA_0層の力学特性に関しては、根系の存在により土に引張り強度が発生すること、せん断強度(特に粘着力成分)が増加することを確認したが、浸透特性に関しては確実な効果は確認できなかった。 さらに、降雨浸透による表層土内の浸透流を飽和近似して理論解析と数値解析を行い、飽和近似でも現地観測結果をかなり説明できることを確認した。
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