降雨時の斜面表層崩壊の機構と植生の崩壊防止効果に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10650484
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 榎 明潔 鳥取大学, 工学部, 教授 (90136309)
• キーワード: 斜面安定 / 透水 / 現位置試験 / 植生

研究概要

第一の目的とした降雨時の斜面表層崩壊の機構については、以下の3過程モデルで表されることが明らかになった。
(1)降雨の斜面表面からの鉛直浸透とウェッティング・フロントの降下
(2)ウェッティング・フロントが基岩に到達した後に生じる、下流ほど水深の深い、基岩平行方向の浸透流の発生
(3)浸透流の水深がある値を超えた場所での間隙水圧による斜面崩壊
そして、この機構を積極的に応用して、人工斜面の設計法を提案し、実際に適用した。
第二の目的とした植生の崩壊防止効果については、以下の力学的効果を確認した。
(1)植生による被覆が浸透特性を変化させ降雨の鉛直浸透量を減少させること
(2)根系の存在が土に引張り強度を与える
(3)根系の存在が土のせん断強度の増加にも役立つ
(4)ことを力学的に指摘できた。
しかし、これらの効果を定量的に評価するまでには至らなかった。現在の二次元的な斜面安定解析では、根系により生じる土の引張り強度を解析に導入することはできないことが判明した。また、無機的な土だけでなく生物も扱うためには、時間をかけた研究が必要であると痛感した。
なお、自然斜面の崩壊予知に対しては、ここで明らかにした機構は、原理的には適用できるけれど、基岩表面形状の把握の困難性、表層上の浸透特性を現地のスケールで精度良く測定することの困難性(現状では透水係数はオーダーのみを問題にする精度の測定しかできない)、降雨波形の予知の困難性などにより、適用しても意味が少ないことも明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Yuji Ikeda,Arturo Ariei Kokubu,Meiketsu Enoki: "MECHANISM OF SLOPE SURFACE FAILURE CAUSED BY PRECIPITATION"PROCEEDINGS of The First Asia-Pacific Conference on Ground and Water Bioengineering for Erosion Control and Slope Stabilization. 435-442 (1999)
• [文献書誌] 榎明潔: 土と基礎. Vol.47 No.5 Ser.No.496. 17-20 (1999)
• [文献書誌] M.Enoki,A.A.Kokubu & Y.Ikeda: "Infiltration of rainwater and slope failure"Landslides. 27-35 (1999)
• [文献書誌] M.Enoki & A.A.Kokubu: "Relation between slope stability and groundwater flow caused by rainfalls"Slope Stability Engineering. 1. 429-434 (1999)
• [文献書誌] Enoki,Meiketsu,Kokubu,Arturo Ariel,Ikeda,Yuji,Yoshikawa,Takahiro: "EVALUATION OF FIELD TEST RESULTS FOR THE ANALYSIS OF SLOPE STABILITY"H11年の広島県豪雨災害調査報告書. 159-165 (2000)
• [文献書誌] 榎明潔,池田勇司,A.A.Kokubu,吉川太洋: "破壊メカニズムの推定"H11年の広島県豪雨災害調査報告書. 167-171 (2000)