土壌汚染や地下水汚染に代表される地盤環境問題を定量的に評価するためには、汚染物質の移流拡散現象を的確に把握しなければならない。そのためには、これらの挙動を支配する地盤の浸透特性値の計測ならびに評価法は極めて重要である。本研究では、原位置透水試験や地下水計測データの新しい工学的な解析手法として、解析アルゴリズムに人工生命技術(Artificial Life Technology)を採用し、原位置透水試験データを現場にて迅速に解析し、従来、解析の困難であった複雑な帯水層条件下においても浸透特性を評価可能なシステムの開発を目的とした。当該研究期間の研究概要は以下のようである。 (1)原位置透水試験として、揚水試験方法に着目し、漏水性被圧帯水層や透水異方性帯水層地盤などの複雑な地盤条件下で実施された揚水試験データについて、その計測データパターンと帯水層条件や水理境界条件の関係を分類整理し、ニューラルネットワークを用いて、それらの標準曲線形状を学習・認識させることにより、地盤の浸透特性値の評価システムを構築した。その際、システムの汎用性を高めるために、標準曲線形状のニューラルネットワークヘの学習方法を検討し、適切な学習データの選択方法について考察した。本方法の妥当性は被圧漏水性帯水層におけるサンプルデータおよび実際に実施された揚水試験データを用いて検討した。 (2)構築されたニューラルネットワークを数値シミュレーションによって作成された複数の揚水試験データに適用し、本解析システムの有用性を検討した。特に、従来、解析技術者が個々の判断基準で行っていた揚水試験データのパターン分類と標準曲線の選択作業をニューラルネットワークによって合理的に行い、個人誤差の低減によって解析精度の向上が期待できることを確認した。 (3)本研究で提案した解析作業をマイコンにて実行可能とし、揚水試験データを現場においてリアルタイム処理する迅速な地盤の浸透特性の算定システムを作成した。
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