研究概要 |
本研究は,岩盤斜面の変位測定に関する簡易的手法の確立を目的とし,次の二つの簡易的システムの構築を目指している。 1.写真画像による遠方監視システムの構築:合成焦点3600mmから本年度は最終的に約5000mmの光学系を構築した。これによって,国道のトンネル坑口上方,観測点より約430m遠方の斜面上の鉛直面内の変位の,計算上の分解能を約0.8mm/画素の精度まで高めた。この斜面にはおよそ1m間隔で、標識プレートが45枚あらかじめ設置されている。平成11年7月と同年11月撮影の写真画像の解析を行った。その結果、137の標識プレート間距離のうち、変化の見られないもの71%、収縮を示すもの約23%、伸びを示すもの約6%であり、その最大量は2〜3mmであった。一方、光波測距儀による結果では当該岩盤は春季〜夏季に谷側方向に2〜3mm変位して冬季に山側にもどる傾向が得られている。すなわち、この挙動は岩盤の温度膨張であり、先の画像解析の結果は光波観測の結果と調和的であった。短期間の観測であるが、本システムの有用性が示されたものと考えられる。 2.レーザー距離計および簡易AEによる変位計測システムの構築:ノンプリズム方式のレーザー距離計を用いて簡便に標点間を1mmの精度で直接測定する方法を工夫し、亀裂の発達した岩盤に適用している。岩盤の変位は小さいので現時点では成果が得られていないが、地すべりにより変状の生じているトンネルの内空変位を約2週間間隔で6か月間測定した。この間で約9mmの段階的な変位状況が観測された。離散的な観測であるため、変位の急増する日時の特定のためにイベントのみを30分間隔でパソコンに記録する簡易AEシステムを現場に併設した。これによって、降雨と地すべりによる変位とが密接に関連していることがAEのイベントより明らかとなった。
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