研究概要 |
土質遺構や石質遺構からなる遺跡の恒久的保存処理剤としての変性エポキシ樹脂の活用を研究・検討した。この変性エポキシ樹脂は土などに混合された場合、土中水を取り込んだ形で硬化反応し、所定の硬化反応を経過した後、当初取り込んだ水分を急激に放出して反応を終結させるという性質を持っている。この放出反応の結果、固化体はポーラスになることが特徴となっている。したがって、固化処理土は大きな圧縮強さ、引張強さに加えて透水性を保持していることが特徴である。2年間に渡って得られた結論を箇条書きすると、以下の通りである。 1.固化処理土の圧縮強度は、固化剤の添加量と土の種類のよって大きく異り、土の種類が{S}で樹脂添加量を重量比で25%混合すると、85,000kN/m^2の一軸圧縮強さが得られ、樹脂添加量を10%と一定にして土の種類を変えた場合、{S}で34,000kN/m^2、{SF}で1,100kN/m^2、{MH}で450kN/m^2の圧縮強さが得られた。 2.引張強さは土の種類にかかわらず、その固化処理土の圧縮強さの30〜40%程度の値が得られた。 3.固化処理土の透水度は無処理土との比較で示すと、樹脂添加量が20%以下であればほぼ一定の透水度を持ち、無処理土の1オーダー低下程度である。添加量が25%を超えると透水度更に1オーダー低下する傾向が認められた。なお、この実験の過程で、固化処理土専用の透水試験装置を考案・試作した。 4.すでに、施工された遺構の経年変化を調査したところ、施工後5年程度であれば、なんら変化は認められなかった。しかし、施工後10年経過した縄文時代の土質遺構では強度的低下は認められなかったが、地衣類の繁茂が観察された。防黴剤の塗布などによって再施工したが、さらに経年変化を追跡する必要性があろう。 以上の結果をもとに施工マニュアルを作成した。
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