真野は阿武隈川を研究対象として、全流域を500mメッシュで覆う擬河道網を作成した。アメダスの観測データから雨を流域に分布させ、洪水流出をキネマティック近似で計算するシステムを開発した。次ぎに、この洪水流の計算結果を土砂を動かすための外力として利用し、土砂の巻き上げ、沈降、移流の核物理過程を再現する土砂輸送モデルを開発した。阿武隈川の、洪水時に濁水を採取できるような簡易型の採水器を著者らはすでに開発してあり、これを使って現地観測を行い、その結果と計算結果を比較して、計算の精度が高いことを検証した。 泉は、1998年の阿武隈川洪水によって運ばれたウォッシュロードを調査し、洪水敷き上に堆積した土砂の粒度分布が堤防に向かって細かくなること、また低水路から少し入ったところに自然堤防のように高く堆積することを明らかにした。また浮遊砂輸送理諭を構築し、堆積の分布形が再現されること、さらに浮遊砂の巻き上げ速度を調節することにより、堆積高さが再現されることを示した。長林は、阿武隈川を対象として、窒素、リン、濁質の輸送特性を調べた。洪水時と平水時それぞれの特性を調べる実測を行った。洪水時には、濁質と全リン、全窒素に強い相関が有ることを示した。また洪水時と平水時の採水に含有される全窒素と全リンの溶解成分の割合を求め、汚濁負荷の相違によりこの溶解性比率が大きく異なることを指摘し、この指標が負荷の同定に有用であることを見いだした。
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