研究概要 |
今年度の研究実績は以下のようである. 1. セグメント1の河相特性をもつ礫床河川の樹林化の実態と,その形成過程を考察するため,利根川水系渡良瀬川においてニセアカシア樹林の拡大が進む区間を調査対象とした.これより,経年的な河道内植生面積の変化(占有率)や横断面地形の変化を調べ,複断面化傾向と植生拡大傾向が同時に進行していることが明かとなった. 2. 樹林地を形成する地点の河床表層には,均一な細砂(粒径1mm以下)が堆積した層状構造(細粒砂層)がよく見られる.この層内をニセアカシアの根茎が平面的に張り広がることによって樹林地が形成されていることが現地調査から分かった.礫床では根茎の広がりに制限がかかるものの,細粒砂層では自由で容易に根茎の拡大範囲が広がる.また,拡大速度も礫床に比べ,かなり早いことが推定される. 3. 細粒砂層が存在することが樹林化のキーポイントになる.細粒砂層を構成するものはセグメント1河川の河床材料として上流から運搬のみならず対象区間にも十分存在している.こうした細砂が低水路で巻き上がり,比高の高い所で堆積することで細粒砂層が形成されることが推測された.堆積を促す水理学的要因は,比高さの増加に対して沈降・摩擦速度比が大きくなること,草本類による浮遊砂のトラップがあることが指摘され,こうした効果を取り込んだ水理モデルからの評価を行う必要が認められた. 4. 平成10年9月の出水による河道痕跡調査を行った結果,比高の高い所では,新たな細粒砂の堆積が生まれ,その後,草本類の成長が見られるなど上述の知見を追認する結果が得られている. 5. 今年度の成果を踏まえて,セグメント1河道の樹林化のシナリオを提案した.
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