研究概要 |
本研究は自由水面変動を有する開水路乱流場の構造の解明が主たる目的とするが,このような乱流計測において重要なのは,使用する計測手法が少なくとも定常流れにおける計測精度を十分確保できるかどうかという点を検討しておくことである。そこで本研究ではまず,最近注目されるようになってきた画像計測手法としてPTV(Particle Tracking Velocimetry)とPIV(Particle Image Velocimetry)をとりあげ,最新の粒子追随アルゴリズムや画像二値化手法を組み合わせたいくつかの手法と従来の手法との比較検討を行った。今回購入した高速ビデオを用いて画像計測システムを構築し,数千枚の画像を用いて定常等流の流速分布を計測した結果,最新のPTVの手法の組み合わせによってより多くの流速ベクトルが得られ,平均流速,乱れ強度やReynolds応力の分布を壁面近傍の粘性底層の内部に至るまで正確に計測できることを示した。また,従来よく利用されているPIVでは,壁面近傍の精度や乱流諸量の計測精度が十分でないことを明らかにした。次に,構築した画像計測システムを利用して落差のあるトレンチ部を対象とした局所流の計測を試みた。その結果,トレンチのアスペクト比がある範囲にあるとき,水面変動すなわち跳水が周期的に上下流方向に振動することを突き止めた。ただし,このように水面変動が激しい場合には画像から水面位置を正確に得ることが非常に困難であり,射流状態では200fpsの高速ビデオでも時間分解能が十分でないことがわかったため,画像計測は主として定常跳水の場合を対象として行い,底面剥離渦に関して良好な計測結果を得ることができた。今後は,実験ケースを増して振動跳水の発生条件をさらに詳細に検討するとともに,水面変動と底面剥離渦との相互干渉に関するモデルの構築を進める必要がある。
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