研究概要 |
開水路に非対称のトレンチ形条の凹部を設置すると,いわゆるバックステップ流れの上流端に窪地を作った形状となる。このような形状は都市河川で見られる人工的な河床の形態の一つと見なせる。下流端における堰上げによる調整をなくせば,水面の大変形を伴うようになり,流れが常流から射流に遷移する開水路流に特徴的な流れが生じる。本研究では,幅0.3m,長さ7mの全面ガラス張りの開水路を用いて,画像計測を主体とした詳細な計測を行った。流れの計測には,高速度ビデオカメラ(200fps)および高解像度(1304x1024pixel)のビデオカメラを用い,流れの画像解析手法であるPTV法あるいはPIV法を適用することによって詳細な流れ場の情報を得た。画像解析プログラムはすべて自作した。計測対象は水路中心の縦断面内の二次元場に限定し,レーザ光膜で照射されたトレーサの微小時間内の移動状況から,平均流速,乱れ強度,レイノルズ応力分布等の乱流統計量を求めた。凹部のアスペクト比を種々に変化させて実験を行った結果,ある水理条件のもとでは,水面が剥離渦と干渉して非常に規則的な振動跳水が発生することを初めて確認した。また,振動跳水が発生する前の定常流においては凹部のアスペクト比によって流れのエネルギー散逸量が非線形に変化をすることを明らかにした。また,縦断面内の詳細な乱流計測から,エネルギー損失の急激な増大が,流れの再付着点距離と凹部長さの相対的な位置関係に強く関与していることがわかった。さらに,振動跳水の要因が凹部下流側で生じる剥離渦の放出に大きく関係することを明らかにした。
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