研究概要 |
水質の生化学現象によって生ずる貯水池熱塩順還流の予測評価と水質改善工法を開発するために,本研究では,(1)嫌気的溶出によって発生する傾斜プルームの実態に関する貯水池観測,(2)底泥から溶出フラックスを定量評価するための現地泥を用いた溶出実験,(3)マイクロバブル供給による深層曝気と塩分・栄養塩集積の抑制に関する現地実験,(4)底面からの溶出フラックスによって駆動される熱塩傾斜プルームの水理模型実験と理論解析を実施した.これより以下のことが明らかになった. (1)嫌気的環境のもとでは,底泥から溶出する塩分が傾斜プルームを発進し,金属成分・栄養塩さらには浅水部の熱を深層部へ輸送する.このような熱塩循環が働くと,温泉湧出や海水侵入など特定の塩分供給がなくとも,汽水域と同様の熱塩成層が山間部の淡水域でも形成され特異な水質構造が形成される.条件によっては,底層が相対的に高温な逆転水温層が形成されたり,底層部が極度に高塩分で安定なために年間を通して全層が循環しない部分循環貯水池となる.以上のような熱塩循環の仮説が(1)の観測研究において実証された.(2)底泥から塩分溶出量と傾斜熱塩プルームの水質輸送量の定量予測手法は,表記(2),(4)によって確立され,貯水池の熱塩集積現象の評価に適用された.(3)こうした熱塩循環は,底泥からの嫌気的な物質溶出に起因している.これを抑制するために(3)ではマイクロバブル発生装置による深水層の曝気・浄化実験を試みた.その結果,貧酸素化の軽減,長年維持されてきた高塩分層・逆転水温層の消失など所定の水質浄化効果が確認された.
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