研究概要 |
土壌や地下水中での物質移動は表流水に比べて極めて遅く,一度難分解性の化学物質に汚染されると,その汚染は長期化する.その反面,水の更新時間が長いため,土壌や地下水の水質情報は積分効果を持ち地上での人間活動の履歴を知る手がかりになる.本研究では,環境同位体を実際に地下水汚染の顕在化している地域で精査し,地下環境中での物質動態と物質の起源を明らかにすること,地上での人間活動が地下水質に及ぼす影響を定量的に評価することを最終目標としている.3年計画の初年度である本年度は,環境同位体の物質移動トレーサとして適用可能性を検討するとともに,地下環境中での物質動態解明に必要な数値シミュレーション技術の開発を行った.前者に関しては,ある小流域を対象に実施した河川・地下水流量および水質の調査結果から,流域内の水循環経路と水収支に及ぼす周辺土地利用変化,地質条件,降水量などの影響を検討した.その結果,住宅地を流れるにつれて増加する傾向にある酸素同位体は家庭排水の流入の影響を示していることが確認された.一方,後者に関しては実際に地下水汚染が発生している現場に開発した数値シミュレーションモデルを適用し,モデルの検証を行った.その結果,今回開発した地下環境が粒子相と間隙流体相から構成されるとした2相モデルが,地表面からの不飽和浸透による自由地下水面への汚染浸透,土壌からの汚染物質の溶け出しなども縫合しうる系統的なシミュレーションモデルであることが確認できた.
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