研究概要 |
土壌や地下水中での物質移動は表流水に比べて極めて遅く,一度難分解性の化学物質に汚染されると,汚染は長期化する.その反面,水の更新時間が長いため,土壌や地下水の水質情報は積分効果を持ち,地上での人間活動の履歴を知る手がかりになる.本研究では,環境同位体を実際に地下水汚染の顕在化している地域で精査し,地下環境中での物質動態と物質の起源を明らかにすること,地上での人間活動が地下水質に及ぼす影響を定量的に評価することを目的としている. 研究の初年度にあたる昨年度は,環境同位体の物質移動トレーサとしての適用可能性を河川水,地下水水質を測定して検討するとともに,地下環境中での物質動態解明に必要な数値シミュレーション技術の開発を行った.本年度は茶畑を調査対象地として,周辺の地下水,池水の水質調査を行い,茶畑周辺地下水の水質特性を検討した.一般に光合成や脱窒などが池内部で起こると,選択的に窒素の^<14>Nから同化したり,分解するのに利用される.したがって,残りの池水中では^<15>Nが濃縮され,δ^<15>N値が大きくなる.調査した茶畑1では,湧水と池水を比較すると,光合成のため,池水はpHの上昇と共に窒素同位体比が3から5%ほど増加していた.一方,茶畑2の一部地域では,湧水と池水のδ^<15>N値の差が小さく,pHや硝酸イオン濃度の変化が少なかった.一般に脱窒作用は,pHが5以下では停止するので、酸性から中性への変化は光合成によるものと考えられる.したがって,この地域では茶畑1でみられた光合成が起きていないこと特徴が認められた.
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