研究概要 |
(1)衛星熱画像にみる水塊構造の形成機構・形成過程・環境評価のため(2)水塊構造の季節変化をみる断面観測と潮流観測を行った。(3)湾の熱成層は陸水起源低塩水が受熱し湾外に熱・淡水の浮力を排出する対流循環で維持されるが潮汐と日射の位相差で著しく変化する。(4)水塊構造は夏は成層鉛直構造、冬は熱塩フロント水平構造であり、この密度構造の季節変化を断面観測で検証した。(5)断面観測で水深15m付近の遷急部の浅水側に高濁層が常駐する。位置は一定だが濃度値と鉛直分布は変動し、濃度分布指標に半水深・基準点濃度比を用いた。(6)高濁層が潮流によることをADP潮流観測で明らかにし、潮流最強時は表層50-60cm/sの対数則、それ以外は排除厚が増し表層80-90cm/sの、多くは対数+直線則を得た。粗面型対数則より摩擦速度は1.5〜2cm/s,相当粗度0.09〜3.3cm、土砂等価粒径50〜100μmを得た。なお精度向上には濃度成層効果とADP伝播損失を補正する必要がある。(7)クロロフィルとDO分布から光合成環境をみた。夏の深水層は飽和度40%以下、11月に80%、12月は飽和を示す。採水のクロロフィル濃度2μg/lでプローブを検定した。有機態の炭素・窒素・リンのC:P比は106前後、N:P比は16を15倍上回る窒素過剰であった。春のプルームは沿岸域の濁りを増大させ、濁水は海底を這う下層密度流で深部まで輸送される。これは淡水珪藻増殖後の沈降と類似であるが、本観測では海底の窪みに入る状況を捉えた。(8)Na分布から満潮憩流時に測線へまわり込む低塩分水の帯を捉えた。他の元素の挙動は二種に分かれ、溶存態元素群Li,B,Sr濃度は深度によらず一様分布を示した。懸濁態金属群Fe,Al,Mn,Znは浮遊砂濃度分布と相似でFe,Al,Mnは特定の測点に集中し、流れや水塊構造の履歴との関係が示唆された。波浪による浅海底質移動については藻場上の浅水波の瞬間流速分布を測定した実験結果の、現地への拡張性を示した。
|