研究概要 |
中野は平成10〜12年度に徳島,高知,香川,兵庫,岡山,大阪,和歌山の7府県でシオマネキ属(Genus Uca)の生息分布調査を実施した.各生息地の底質,気象,地形諸量を説明変数,シオマネキの活動個体を目的変数とするニューラルネットワークを構築し,環境因子ごとの感度分析を実施した.また河口部の塩分変動や動物プランクトンについての現地観測を実施し,数値計算検証のための基礎データ収集に努めた.一方,河口の物理環境と生態系応答を調べるため,2次元河床変動計算法および準3次元流動計算プログラムの整備を行い,問題点の洗い出しと精度の検討を行った.さらに岡部と協力して吉野川河口〜池田ダム間の定期横断測量データを用いて,吉野川下流部の河床変動の経年変化について調べた.岡部は交互砂州の上に発達した植物群落について10×10mメッシュの植生図を作成し,植生と河状履歴との関連について調べた.これまでに提案しているPHABSIMの概念を応用したモデルに加えて,ニューラルネットワークを用いて植生分布の再現を試みた.これらを通して各分析法の特徴と再現性能が明らかになった.上月は吉野川干潟のスナガニ類の分布と環境機能を明らかにするために現地調査,モデルの作成,機能評価を行なった.スナガニの3種の分布を予測する統計モデルを作成した結果,夏期の吉野川干潟のヤマトオサガニの個体数は約120,000,000個体で,流域からの年間排出窒素量の約0.09%がヤマトオサガニによって固定され,2.5%が浄化されていると推算された.北野は河口地形変化の現象を把握するために,深浅測量による地形の時系列データを対象とした主成分解析による新たな地形変動分析法についての理論的考察を行った.時系列データを複素化することにより,地形変動の時間的スケールやその伝播経路といった変動特性について摘出可能であることを示した.
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