研究概要 |
水資源の有効利用には水文気象時系列の精度良い予測が必要となるが,本年度は,水文気象現象に多大な影響を及ぼすといわれているサザンオシレーション指標(SOI)のカオス的特性解析を行った.まず,長期間の月単位のSOI時系列を得るために,その基となるタヒチとダーウィン地点の大気圧データを種々の文献から収集した.そして,これから算定される2種類の定義によるSOIの値には余り差のないことを示した. 次に,定義雑音を含む水文気象時系列からカオス的特性を抽出するためには,まず,その雑音を取り除くことが必要となる.本研究では、従来の線形スムージング手法である移動平均やローパスフィルターの他に近年注目されている非線形スムージング手法をSOI時系列に適用した.非線形スムージングによりカオスに無関係なノイズが除去され時系列の本質的特性が引き出されることが期待された. SOIデータの生時系列および上記3種のスムージングSOI時系列に対し,まず,自己相関関数を求め,またスペクトル解析を行い,SOI時系列の基礎的解析を行った.次いで,カオス特性量としての位相空間軌跡、リアプノフ指数、相関次元等を算定し,SOI時系列がカオスであるかを判定した.その結果,非線形スムージングが,特に相関次元の算定過程で,他のスムージング時系列とはかなり異なった特性を示すことが分かったものの,いずれのSOI時系列に対しても有意なカオス的特徴は検出できなかった.すなわち,SOI時系列はカオスというよりもランダムであるということが明らかにされた.
|