研究概要 |
これまで,日本のような中緯度における気候へのエルニーニョ及びラニーニャ現象の明瞭な影響はあまり認められていない.そこで,本年度では,エルニーニョ及びラニーニャ現象の指標となるサザンオシレーション指標(南方振動指数,SOI)と福岡市月降水量及び月平均気温との相関について解析及び検討を行った.本研究では1890年1月から1998年12月(データ数1308)までのデータを用いて解析を行った. まず,全データを対象とした相関解析を行った結果,SOIと福岡市月降水量及び月平均気温時系列共に相関関係はほとんど見受けられなかった.そこで,SOIのデータをその大きさによって(1)SOI<-2,(2)-2≦SOI<-1,(3)-1≦SOI≦1,(4)1<SOI≦2,(5)2<SOIの5つのカテゴリーに分類し,そのカテゴリーごとのデータに対し,ある月のSOIとそのSOIからnヶ月後の福岡市月降水量及び月平均気温との相関関係について調べた.その結果,エルニーニョ及びラニーニャ現象が生じていない-1≦SOI≦1の場合には,ほとんど相関が見られないが,SOIの絶対値が大きくなるにつれて相関係数の絶対値も大きくなるという傾向が出てきた.最も相関が大きかったのは,SOI>2のラニーニャ現象のデータに対する遅れが4ヶ月の時であり,相関係数は-0.49(有意水準1%で有意)であった.この場合,ラニーニャ現象が大きくなる(SOIが大きくなる)程,4ヶ月後の降雨が少雨となることが認められた. 次に,SOIと月平均気温との相関解析の結果,SOIのカテゴリーが(2),(3),(4)の場合はほとんど相関が見られないが,カテゴリーが(1),(5)のエルニーニョ及びラニーニャの月の相関はかなり大きく,はっきりとした1年周期が見られた.そして,カテゴリー(1)に対する遅れが0ヶ月の平均気温の相関について調べた結果,エルニーニョ現象が大きくなるほど気温も低くなる傾向が認められ,特に,エルニーニョ現象が顕著になるほど夏の気温が低くなる傾向が現れた.
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