研究概要 |
1.研究目的 稲や麦あるいは河原のアシ・ヨシなどの植物群には,時折特に強風時に,穂波発生がみられる.植生層の直上(上縁付近)には大規模な秩序構造をもつ渦列が形成され,これが,大気層と植生層との間の運動量,物質,熱などの混合に大きく貢献している.穂波はこの混合作用に強く関わっていると考えられる. 本研究は,3次元数値シミュレーション・モデルを開発し,これを用いてホナミ発生のメカニズムを解明し,植生層内外の乱流構造を明らかにしようとするものである. 2.得られた成果 穂波の発生のメカニズムに関しては,(a)ガスト・アタック説,(b)大気乱流と稲穂の撓みとの共鳴説,(c)大気流と植生層の間の剪断流の変曲点不安定説が提案されている. (1)本研究では,LES乱流モデルによる,稲穂茎大変形を考慮した3次元数値シミュレーションの計算法を提出した. (2)広範な数値実験の結果,大気層と植生層との界面に生じる剪断流により,(渦の大きさや発生の周期は流れの形成とともに変化するものの)規則的な渦列の発生は乱流状態においても確認された. (3)穂波は,(稲の固有周期と渦の発生周期とがずれていることもあり)発生の初期では渦列との相関は低かった.後半期には,渦列発生の周期は稲波のそれに近づいた. (4)このことにより,大気の乱れの少ない状態では明確な剪断流不安定説により,乱れの十分に発達した段階では,大気乱流との共鳴説やガスト・アタック説が成立すると結論される.
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