長良川河口堰モニタリング資料の整理・分析と環境境界条件に対応した長良川河口堰上下流域の水理・水質変化を明らかにするための数値解析を行った。 長良川河口堰モニタリング資料の解析では、堰近傍の水質自動監視装置(イセくん)の水質観測データと堰管理所の気象・流量データに数量化理論I類を適用し主にクロロフィルaとDOの変化の支配因子を明らかにした。まず、平成7年〜平成9年の全てのデータを対象とした場合、特に水温と水温差(成層発達)がクロロフィルaとDOに影響を与えていることが分かった。また、季節で分けて解析した場合、4月〜6月の季節の変わり目では水温と水温差の影響が支配的となるものの、夏場(7月〜9月)は水温差の影響のみが卓越することが分かった。つぎに、平成7年〜平成9年の解析で得られたカテゴリースコアーを用いて平成10年のクロロフィルaとDOの再現計算を行った。その結果、年データを対象とした場合は、再現値と実測値が比較的良く一致した。また、長良川河口堰下流域の流れと密度場(水温、塩分)の現地観測結果および堰管理所で計られた気象・流量データから、河口堰下流域の流れの特性を検討し、それらが概ね潮位変動に大きな影響を受けていることを改めて示した。さらに、流れの特性を踏まえてDOの低下現象に着目すると、多くの場合、洪水後にDOが低下していることが分かった。また、洪水後、小潮の場合は大潮の場合よりも鉛直混合が抑制されるため急激にDOが低下することが分かった。したがって、洪水後はDOの低下に注意を払う必要があることと、その場合の河口における塩分濃度の状況が一つの指標になることが示された。 つぎに、平成7年〜平成11年の8月における堰上流域の流れと水質の数値解析を行い、数値解析モデルの再現性と得られた水理・水質特性について検討を行った。この結果、浚渫の進行に伴う河床形状の改変が流れに及ぼす影響に加え、藻類の増殖・集積減少が流量、風向・風速、および堰操作により時空間的に変化する状況が流動特性との関連より明らかにされた。また、堰下流域の流れと塩分の3次元解析を行った。この解析において、河口干潟の露出や揖斐川の分合流の状況を含めて、観測結果との比較から定性的な流れと密度場が再現された。
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