研究概要 |
大都市圏における鉄道ネットワークの需要予測手法の精緻化を目的として,筆者らは効用関数の誤差項の構造化により選択肢間の類似性を個人ごとに表現するプロビットモデルを基礎的に開発してきた.本研究は,プロビットモデルの新たな理論展開と実用化の具体的な検討を目的とし,選択肢数の増加への対応,選択肢集合の設定方法などを検討するものである.特に,今年度はプロビットモデルの適用範囲の拡大,推定可能性の検討に主眼においている. 最初に,従来の鉄道経路選択だけではなく,目的地選択や首発時刻選択などの他の交通選択をプロビットモデルにより定式化を検討し,推定可能性の検討は済んでいないものの,個人ごとの誤差構造を表現することができた. 次に,多数の選択肢における推定可能性の検討を行い,鉄道経路選択に関しては概ね10肢選択にまで対応可能となった.また,個人ごとに選択肢が異なるケースについても,ハイブリッド型の推定手法の開発によりその対処が可能となった. 最後に,プロビットモデルの適用に際して課題となる選択肢集合の合理的な設定方法について,鉄道経路選択を例に基礎的な検討を行った.ここでは,利用者がどのような経路を類似していると認識するかについて,効用の類似,空間的類似などのいくつかのケースを想定し,選択肢を削除・統合できる条件を整理した.その結果,経路間の距離の重複が90%を越える場合には選択肢を統合しても選択確率に与える影響は小さいことが示された.
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