研究概要 |
信号交差点の交通容量は飽和交通流率と信号制御方法に基づいて決定される。したがって信号交差点の交通容量に関する研究は,ほとんどの場合飽和交通流率を対象にして行われる。本研究では、東京都内および都内近郊の信号交差点における飽和交通流率を実測し,その結果に基づいて飽和交通流率の変動特性とその影響要因を明確にすることを目的に実施した。飽和交通流率の実測データの収集を行うために,飽和交通流率の基本的要因である流入部幅員,車線幅員,車線数の条件に応じて信号交差点を選定し,観測を実施した。 本研究で得られた結果をまとめると以下のとおりである。 (1)現在,同一の幾何構造条件に対して一定の飽和交通流率の基本値が用いられているが,実測の結果,幾何構造条件が同一であっても飽和交通流率はかなり大きく変動することが確認された。 (2)従来,大都市部と中小都市部とでは飽和交通流率の基本値は異なることが指摘されていたが,本研究の結果からは,飽和交通流率は大都市部と中小都市部との差より,大都市部内(東京都内)の交差点間の変動の方が大きいことが明らかになった。 (3)本研究で得られた飽和交通流率の値は1600〜2200台/青1時間であり,非常に大きな変動のあることが確認された。飽和交通流率の値は一定ではなく,交差点ごとに変動すると考えるべきであることを示した。特に,3m未満の狭い車線幅員の飽和交通流率は標準車線幅員と比較して低く,車線幅員が狭いと,飽和交通流率に大きく影響することがわかった。 (4)影響要因ごとの解析だけでは飽和交通流率の変動を説明するには不十分であり,その変動を説明するためには個々の交差点に存在する固有の条件に基づく詳細な解析が必要であることが判明した。交差点ごとの詳細な分析の結果,データには分布から外れた極外値が存在しており,この極外値の発生状況が交差点ごとに異なっていた。このことが飽和交通流率を変動させる要因の一つであるという事実を明らかにした。
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