研究目的の達成のため、クリプトスポリジウム原虫の代替粒子に含蛍光マイクロビーズ(平均径6μm、比重1.05、ゼータ電位はpH7で-35mV)を用いた実験を行い、以下のような知見を得た。 1. カオリンとビーズの共存試料のPACによる凝集においては、上澄水中のビーズ数はカオリン濁度と同様に、pH6.4-7.2のほぼ中性域で最低となった。ビーズはカオリンより大きいこともあって、濁度より僅かに高い除去率を示し、両者間には高い相関が認められた。 2. 定速ろ過中にビーズを注入して流出挙動を調べた結果、ビーズの流出数は初期漏出期に最も多く、終期漏出期、成長期の順に減少した。初期漏出期のビーズ流出の抑制には、ろ材表面の改質が有効と考えられる。また、ビーズの流出は、打ち込み直後だけではなく、時間の経過に伴って抑留濁質に随伴して流出した。 3. ろ過途中から原水pHが変動した場合の流出数については、酸性側変動(pH6.8→5.5)時には9〜11個、アルカリ性側への変動(pH6.8→8.0)時には1〜2個となり、前者の方が流出し易いことが分かった。 4. 定速ろ過の途中からろ過速度を25%上昇させた場合、ビーズの流出は抑留濁質の流出に随伴して起こった。流出数については、ろ過の経過時間が長い場合ほど、多くのビーズが流出することが確認された。 5. クリプト原虫を高効率で分離するには、第一に、最適凝集領域を選定すること、また、原水pHの酸性化やろ速上昇については、極力避けることが大切である。いずれにしても、従来のろ過では、特に、ろ層が未熟なろ過初期に原虫の流出は避けがたいので、ろ過開始に先立つろ材表面の改質が必須と考えられる。
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