水道水に起因するクリプトスポリジウム感染症が1980年代から頻発している。これを抑制するため、凝集および砂ろ過による固液分離効率を現状の2.5〜2.7logから4log程度に向上させることが重要な課題となっている。 本研究では、凝集および砂ろ過における当該原虫の除去挙動を把握するため、原虫モデル粒子として蛍光ラテックスマイクロビーズを用いて基礎的実験を行っている。その結果、以下のような諸知見が得られた。 (1)pHに伴う蛍光ビーズのゼータ電位の挙動は、カオリンなどの濁質や実際の原虫などのそれと概ね類似した傾向を示した。また、同ビーズの凝集沈澱処理性はカオリンのそれと類似しており、カオリン共存時における最適凝集のpHは6.4〜7.2である。 (2)蛍光ビーズを用いたろ過実験では、直接採砂・振とう剥離処理などの後、落射型蛍光顕微鏡下で試料中のビーズを計数する手法を考案した。この手法によるビーズの回収率は90.5〜96.4%と非常に高く、ビーズのろ層内抑留挙動を解明するのに有効である。 (8)蛍光ビーズのろ過挙動に関しては、ろ層が未熟なろ過初期に流出しやすいこと、原水の酸性化やろ速上昇時に、濁質に随伴して流出することなどを明らかにした。 (4)急速ろ過法によって当該原虫を高効率で分離するためには、最適のpH領域で凝集沈澱を行うこと、原水条件や運転条件の変動をできる限り避けることの他、ろ層が未熟なろ過初期を含めた全ろ過過程において、流出濁度の低減化のために、ろ材の凝集剤被覆などの工夫をすべきことが示唆された。
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