研究概要 |
樹木衰退が報告されている神戸市六甲山系および名古屋市の熱田神宮において、衰退木および健全木の周辺土壌(16地点)を採取し、土壌および間隙水の化学特性を分析した。得られた結果および結論を以下に要約する。 (1) 六甲山系では多くの土壌pH(H20)ならびに間隙水pHが4前後を示し、塩基飽和度はほとんどが10%以下であること等から、樹木衰退度の違いに関わらず土壌の酸性化が顕著であることが分かった。間隙水中Al濃度、Al^<3+>濃度が1mg/Lを超える濃度が検出されたことから、土壌がアルミニウム緩衝領域にあることは明らかである。 (2) 樹木の衰退と関連があるとされる土壌特性をピックアップし、六甲山系の各調査地点の土壌酸性化度に関するランク付けを行った。その結果、土壌の酸性化が顕著であり樹木に影響を与えやすいと診断された地点と実際の樹木衰退の程度とは比較的良い一致を示した。 (3) 熱田神宮の境内土壌では、樹木衰退の周辺土壌でのみ土壌の酸性化が顕著であった。このことは、土壌酸性化と樹木衰退との関連性を強く示唆していると言える。しかし、交換性Alはほとんど検出されず、アルミニウムの毒性が樹木衰退に関連しているとは考えられない。交換性、間隙水ともにMg濃度が低く、栄養塩としてのMgの欠乏が樹木に悪影響をもたらしている可能性を示唆した。 (4) 六甲山系で採取した土壌については、森林土壌をO層、A層、B層に分けて採取分析しCa,Mg,K,Na,Alの動態を考察した。その結果、O層は下部2層とは異なり塩基成分を多く含むがpHは最も低いこと、O層とA層では陽イオンの交換能が異なる可能性があること、等を示した。
|