本研究では、収着に特に重要である成分重量比と比表面積を基準にして、7種の単一模擬底質試料{砂(購入)、膨潤性結晶性粘土:モンモリロナイト(購入後精製)、非膨潤性結晶性粘土:カオリナイト(購入後精製)、ケイ酸アルミニウム(生成)、酸化鉄(生成)、酸化マンガン(生成)、フミン質}を調整した。また、3種の複合模擬底質試料(結晶性粘土の表面を非結晶性金属水酸化物で被覆したもの、非結晶性金属水酸化物の表面をフミン質で被覆したもの、結晶性粘土の表面を非結晶性金属水酸化物で被覆し更にその表面をフミン質で被覆したもの)を合成した。また、琵琶湖底質を採取し、これを実底質試料とした。 収着させる微量有機汚染物質として、琵琶湖底質中に比較的高濃度で存在する発癌性・変異原性を有する多環式芳香族化合物(非極性物質であるピレンおよび極性物質であるアミノピレン)を採用して、模擬底質試料および琵琶湖底質試料への収着・脱着平衡および収脱着速度を回分式実験により測定した。 回分式実験の結果、模擬底質試料および琵琶湖底質試料共にピレンの収脱着は瞬時に平衡に到達するが、アミノピレンの収着速度は遅く、脱着が非可逆的であることがわかった。また、アミノピレンの脱着の非可逆性については、底質試料中の有機炭素含有量が少ないほど大きいことがわかった。更に、上記の実験結果を基に、収脱着平衡およびこれらの速度を底質の各成分の含有量をパラメータとして予測するためのモデルを構築した。
|