微量有機汚染物質の河川・湖沼の底質への蓄積は、その生態系に対する影響が懸念されている。したがって、琵琶湖を始めとして、様々な河川・湖沼の底質から検出されているPAH(Policyclic Aromatic hydrocarbons、多環式芳香族化合物)がどのようにして、どの程度底質に蓄積するのか、また、PAHが蓄積した底質が巻き上がった場合にどうなるのかを知るために、収着および脱着機構の解明は重要である。そこで、本研究では被収着物質の極性の有無、収着剤の有機無機の相違による影響をみるために、被収着物質としてピレン(Pyrene)およびアミノピレン(Aminopyrene)、収着剤として実験室で作成した模擬底質(フミン酸、2成分複合模擬底質および3成分複合模擬底質の3種類)を使用して、回分式で、収着平衡および脱着平衡実験、収着速度および脱着速度実験をおこなった。 回分式平衡収着実験では、無極性のピレンは主として有機成分(フミン酸)に多く収着され、無機成分に対する収着は非常に少なく、3成分複合模擬底質でも有機成分の収着に対する寄与が大きかった。一方、極性を有するアミノピレンは有機、無機成分の両方に同等の収着を示したが、3成分複合模擬底質では無機成分の収着に対する寄与が大きかった。また、アミノピレンは無機成分からは脱着せず、収脱着に関するヒステリシスが存在した。さらに、回分式でおこなった速度実験では、ピレンは有機、無機成分の両方に対して非常に速く収着されたが、無機成分からの脱着は遅かった。また、アミノピレン収着速度はフミン酸>2成分複合模擬底質>3成分複合模擬底質となり、2成分複合模擬底質にフミン酸が収着することによってアミノピレンの収着が阻害されることがわかった。
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