研究概要 |
都市域の合流式下水道では,雨天時,しばしば,下水処理場の処理能力を上回る多量の汚濁雨水が流出し,処理されないまま,下流域の河川,湖沼へと排水されている.こうした汚濁雨水の未処理排水は,明らかに,都市域を抱える河川,湖沼,内湾などにおいて近年顕在化している水質悪化の原因の一つと考えられ,この排水問題の早期解決が切望されているところである. 本研究は,上述した都市下水道流域からの未処理汚濁雨水の放流を軽減・防止する諸対策,特に,下水道管渠システム内に設置される諸施設(対策)の軽減・防止効果を正確に評価・予測しえる分布型雨水汚濁負荷流出解析モデルの開発を目指したものである. はじめに,雨水流出には各国で広く用いられているSWMM(Stormwater Management Model),汚濁負荷流出には土研モデル(集中型)を改良した分布型土研モデルを用いる雨水汚濁負荷流出シミュレーション・モデルを提示した. 次いで,これを低平市街地の一ポンプ排水区(流域面積45.5ha)に適用し,実測結果(雨水流出のハイエトグラフ,ポンプ井水位ハイドログラフおよび流出流量ハイドログラフ,BOD,COD,SSの流出のポルート・グラフおよびロード・グラフ)と対比してその実流域への適用性を検討した.その結果,本モデルの適合性は,現段階では,未だ十分なものであるとは言い難いが,したがって,本モデルの改良をさらに進めてゆく必要はあるものの,本モデルによって,セキ上げ背水,低下背水,圧力流れなどを伴う雨水流出のもとでの汚濁負荷流出を(近い将来には)的確に評価しえるであろう見通しは得られている.
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