促進酸化法はオゾン処理に比べ溶解性有機物質の酸化分解に有利であることが2年間の研究で明らかになった。しかし、酸化分解力が強いために健康影響が懸念される副生成物を造り出すことも知られている。特に原水中に臭化物イオンが存在するとオゾン等により酸化をうけ、臭素酸にまで酸化される。この臭素酸には強い発癌性が指摘されており、オゾン処理や促進酸化処理にとって、その生成抑制は重要なテーマである。 本年度はオゾン単独処理を対照として、オゾン/過酸化水素処理、オゾン/紫外線照射処理について、人工原水を用いて、臭素酸生成特性について実験による比較検討を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 (1)オゾン単独処理、オゾン/紫外線照射処理で臭化物イオンが存在する場合は、次亜臭素酸を生じ、それがヒドロキシラジカルと反応し、臭素酸を生成するため、原水中に同時に存在する有機物質の酸化分解が阻害される。 (2)オゾン/過酸化水素処理については臭化物イオンとオゾンとの反応による次亜臭素酸の生成が抑制されるため、ヒドロキシラジカルの消費が少なく、有機物質の酸化分解は影響を受けない。 (3)オゾン/紫外線照射処理においては、減少した臭化物イオンはその殆どが臭素酸にまで酸化される。 (4)臭化物イオンの存在する水道原水に促進酸化処理を導入する場合には、臭素酸生成抑制を考慮すると、オゾン/過酸化水素処理が優れている。 (5)臭化物イオンが臭素酸にまで酸化を受ける経路は3経路考えられるが、このうち、次亜臭素酸を経てヒドロキシラジカルにより臭素酸に酸化される経路が重要である。
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