研究課題/領域番号 |
10650551
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研究機関 | 国立環境研究所 |
研究代表者 |
稲森 悠平 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 総合研究官 (10142093)
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研究分担者 |
水落 元之 国立環境研究所, 地域環境研究グループ, 主任研究員 (50260188)
徐 開欽 国立環境研究所, 水土壌圏環境部, 主任研究員 (20250722)
渡辺 信 国立環境研究所, 生物圏環境部, 部長 (10132870)
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キーワード | 環境生態工学 / 環境負荷 / 底生生物 / 定着化 / 水質浄化能 / 人工干潟 |
研究概要 |
環境生態工学の原点であり、COD、窒素、リン等の浄化力を有し、有用海産物の再生産の場としての干潟における共存と安定のシステムを構築する上で、生態学、生態工学水理学、分析化学的側面に立ち、干潟生態系の浄化機能と密接に関連する食物連鎖を構成する各種生物間の捕食被捕食関係を含めた相互作用、重要なマクロベントスの生殖・定着化技術、水質浄化と生物間相互作用に係わる各種パラメータを明らかにするために研究を行った。 本年度は、捕食分解力の高いゴカイに及ぼす環境汚染物質の環境負荷における定着の可能性について検討した。その結果、対照系、環境汚染の物質としての重油添加系では、桑実胚となったのは90%であり、トロコフォアに変態したものは、対照系に比較して低下し重油添加系においては60%以上となった。このことから、重油流出等における環境負荷の与えられた環境においても定着能は低下するものの、かなりの頻度で定着は可能であると考えられた。また、干潟ベンチスケールを用い底生生物であるアサリ、ゴカイで構成される系を作成し、重油の添加による環境勾配を与え影響試験を行った結果、アサリはゴカイに比べ重油に対し感受性が強く低濃度でも死滅し、死骸由来の有機物等により水質悪化を生じるが、ゴカイ添加系においては、それほど大きな水質変動の生じないことがわかった。このことから、底生生物のなかでもゴカイは重油流出事故のように突発的な環境負荷においても浄化能力の維持可能なことが示唆された。また、葛西人工干潟と三番瀬干潟のCOD浄化能と生物種類数・現存量を調査したところ、水深1〜3m付近において三番瀬は現存量で大きく上回っており、COD浄化能は2倍以上の浄化能を有していることがわかった。以上のことから、環境負荷の程度にもよるが、エコエンジニアリングを導入することにより、多量の生物の定着を図ることで、自然干潟と同等の浄化能を有する人工干潟の構築が期待できることが示唆された。
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