研究課題/領域番号 |
10650553
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
名和 豊春 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30292056)
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研究分担者 |
羽原 俊祐 太平洋セメント株式会社, 研究本部・佐倉研究所, セメント化学グループリーダ
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キーワード | くし形高分子 / 高性能コンクリート / 主鎖ポリマー / グラフト鎖長 / 温度 / 練混ぜ / 自己充填性 |
研究概要 |
本年度は、前年度の研究を継続して、先ずくし形高分子の主鎖およびグラフト側鎖長を変化させた高性能AE減水剤の流動化作用に及ぼす環境温度および練混ぜの影響についてペーストの性状から検討した。次にペーストの成果に基づいて、コンクリートの性能を確認し、最適な化学構造の1つの方向性を見出した。本研究で得られた知見を以下に示す。 (1)メタクリル酸を主鎖とするくし形高分子は、温度の影響を受けづらく、さらにグラフト鎖が長いほど温度の影響が少ない結果となった。 (2)くし形高分子の分散性能は練混ぜ時間によって変化し、グラフト鎖が短い場合は、主鎖の種類に拘わらず、分散性能は練混ぜ時間の影響を受けないが、グラフト鎖の長いと、主鎖が無水マレイン酸系では練混ぜ時間が延長するにつれてフロー値が著しく増大するのに対し、メタクリル酸系では、練混ぜ時間3分でフロー値が最大となり、その後フロー値は若干低下する傾向が認められた。なお、どの種類の減水剤を用いても吸着量にほとんど変化が見られず、エトリンガイトの生成量は練混ぜ時間10分の方が多くなる結果となり、練混ぜの効果は吸着量の変化や水和物よる架橋以外のメカニズムであることを明かにした。 (3)くし形高分子を用いたコンクリートの流動性は、セメントペーストと同様な傾向が認められ、主鎖がメタクリル酸でグラフト鎖の長い高性能AE減水剤が、最も少ない添加量で高い分散性能を発揮し、自己充填性能を満足することを確認した。 (4)昨年度の結果も考慮すると、メタクリル酸を主鎖とするグラフト鎖が長いくし形高分子は、使用するセメントの種類、環境温度および練混ぜ等の影響を受けないで安定したコンクリートの供給ができ、さらに高い減水性能と低い水和遅延性という相反する性能を満足できることを見出した。
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