本研究では、従来の拡底面がフラット型の場合におけるひび割れ発生の実証と拡底面を尖らせることによるペンシル形状の効果の検討を主な目的としており、様々な荷重レベルで載荷を中断したモルタル製の摸型杭による掘り出し観察実験や拡底先端面を尖らせる角度を様々に変化させた比較実験等を行った。なお、地盤は強固な支持層を想定しており、相対密度約90%の豊浦砂を用いて作成した摸型地盤の表面を加圧した状態で実験を行っている。これは、ほぼ40mの深さに相当する地盤内の応力条件を再現したことになる。結果として、拡底面がフラットな場合、杭軸部での被壊荷重の50〜60%程度の荷重で拡底面にひび割れが発生するが、荷重〜沈下量関係ならびに終局の被壊荷重にはほとんど影響を及ぼしていないことが分かった。ただし、これらのひび割れの発生が杭の支持耐力に及ぼす直接的な影響はほとんどないと考えられるが、ひび割れの程度によっては補強筋の腐食に繋がる重要な問題である。一方、拡底先端面を尖らせる角度を様々に変化させた比較実験においては、拡底先端面をわずかても尖らせると、地盤からの締め付け力が杭中心方向へ作用するため、ひび割れはまったく発生しなくなる。しかし、尖らせる角度が大きくなると、同じ沈下量に対する支持能力が急激に低下するため、フラットに近いわずかな角度で十分であるという結果を得た。 これらの研究を進める中で、比較実験のため拡底杭の軸部と同径の直杭の支持力試験を行い検討したところ、堅固な基盤層を想定した加圧条件では拡底杭の支持能力に十分すぎるくらいの差があった。この結果より、必ずしも堅固な基盤層のみに拡底部先端を定着させる必要はなく、さらに経済的に利用するためには、杭の沈下量を適切に押さえ、中間層に設置することも今後検討する必要がある。
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